WAFでBot対策はできる?仕組みと限界・専用対策との違いを解説
更新日:2026-08-12 公開日:2026-04-07 by Bitmoss
近年、Webサイトを取り巻く環境は大きく変化しています。もはや「アクセス=人間」という前提は崩れつつあります。
Thalesの「2026 Bad Bot Report」によると、2025年のインターネットトラフィックの53%をBotが占め、そのうち約40%が悪意あるBotとされています。さらに、AIを利用したBot攻撃は前年比12.5倍に増加しており、Botによる自動化は量だけでなく、その性質も大きく変化しています。
つまり現在のWebは、「人間よりBotのほうが多い」状態に突入しています。
さらに2026年版のレポートでは、従来の「Good Bot」「Bad Bot」に加えて、AIエージェントが新たなトラフィックのカテゴリーとして存在感を高めていることも指摘されています。今後は「Botか人間か」を見分けるだけではなく、そのアクセスが何を目的としているのかを判断することが重要になります。
こうした状況を背景に、株式会社フューチャースピリッツは2026年3月、エストニア発のセキュリティ企業Blackwallと提携し、Bot対策サービス「MTSS(Managed Traffic Security Service)」の提供を開始しました。
WAFだけでは防ぎにくいBot攻撃が増えています
WAF(Web Application Firewall)は、SQLインジェクションやXSSなど、Webアプリケーションへの攻撃を検知・防御する重要なセキュリティ対策です。一方で、人間に近い振る舞いをするBotや、正規のリクエストを装ってビジネスロジックを悪用するBotは、WAFだけでは判別が難しいケースがあります。
こうしたBot攻撃には、次のような特徴があります。
- 人間に近いアクセス挙動
- 分散されたIPアドレス
- AIによる行動変化
実際、Thalesの調査ではAIを利用したBot攻撃は2025年に前年比12.5倍まで増加しており、AIによる自動化がBot攻撃の高度化を加速させています。
このような特徴により、従来のシグネチャベースの防御では検知が難しくなっています。
実際、Botは単なる「アクセスの自動化ツール」ではなく、ビジネスに直接的な損失を与える存在へと進化しています。
代表的な被害としては以下が挙げられます。
- 不正ログイン(Credential Stuffing)
- チケットや商品の買い占め
- コンテンツのスクレイピング
- 広告クリック詐欺
- 在庫妨害
- DDoS攻撃
また、Botの標的はWeb画面だけではありません。2026 Bad Bot Reportでは、Bot攻撃の27%がAPIを標的としていることが報告されています。APIを直接狙う攻撃では、画面を経由せずバックエンドへアクセスできるため、Webサイトだけを監視していても不正な自動アクセスを見逃す可能性があります。
これらは単なるセキュリティ問題にとどまらず、売上・ブランド・顧客体験のすべてに影響する経営課題といえます。
大量アクセスによるサービス停止リスクについては、DDoS攻撃の仕組みも理解しておく必要があります。
Bot対策は「入口で識別・制御する」時代へ
こうした背景から登場しているのが、Bot対策に特化した新しいアプローチです。なお、トラフィックの入口で制御するという考え方は、CDNを活用したセキュリティ対策とも共通しています。
BlackwallのMTSSは、従来のWAFとは異なり、通信の「振る舞い」をAIで分析することでBotを識別します。
特徴は大きく3つあります。
1. Good BotとBad Botを自動識別
検索エンジンのクローラーなど許可すべきBot(Good Bot)と、不正行為を行うBot(Bad Bot)を識別して制御します。さらにAIエージェントの普及により、今後は単純な善悪の分類だけでなく、「どのような目的でアクセスしているか」を判断することも重要になります。
2. 振る舞いベースの検知
既知の攻撃パターンではなく、アクセスの動きや特徴からBotを識別します。人間を装う高度なBotにも対応可能です。
3. 実績ベースの防御力
悪意あるBotトラフィックを自動で検知・制御します。
さらにMTSSは単なるBot対策にとどまらず、
- WAF機能
- L7 DDoS防御
- キャッシング
- SSL/TLS管理
- ロードバランシング
といった機能を統合した「All-in-One型」のWebトラフィックセキュリティとして設計されています。
「見えない脅威」を可視化します
Bot対策が難しい理由の一つは、「被害が見えにくい」点にあります。
Blackwallの資料によれば、多くの企業はそもそも自社サイトにどれだけBotが来ているのかを正確に把握できていません。
MTSSでは、
- Botトラフィックの可視化
- アクセス傾向の分析
- 種別ごとの制御
が可能になり、「何が起きているか」を把握した上で対策を打てるようになります。
これは単なるセキュリティ強化ではなく、データドリブンな運用への転換ともいえます。
なぜ今、日本市場なのか
BlackwallのCEO Nikita Rozenberg氏は、日本市場について「パフォーマンスと信頼性を重視する重要な市場」と位置付けています。
フューチャースピリッツ側も、ホスティング事業を通じて「Botによる不正アクセスの増加」を現場レベルで強く認識していたといいます。
特に日本では、
- ECサイト
- メディアサイト
- SaaSサービス
など、トラフィックを収益に直結させるビジネスが多く、Bot対策の重要性は今後さらに高まると見られています。
また、BotやAIエージェントによる自動アクセスが増える中、Bot対策の重要性はグローバルでも高まっています。
「WAFの次」をどう考えるか
今回の取り組みが示しているのは、「WAFか、それ以外か」という二択ではありません。
WAFはアプリケーションの脆弱性を守る役割を担い、Bot対策はトラフィックの入口で不正を制御します。
つまり両者は競合ではなく、補完関係にあるレイヤー防御です。
今後のWebセキュリティは、
- アプリケーション防御(WAF)
- トラフィック制御(Bot対策)
を組み合わせた構成が前提になっていく可能性が高いでしょう。
まとめ:Webは「人間だけの世界」ではなくなりました
Webトラフィックの53%をBotが占め、AIを利用したBot攻撃も急増する現在、Webセキュリティは「人間かBotか」を判別するだけでは不十分になっています。
重要なのは、「Botを完全に排除する」ことではありません。価値をもたらすBotは活かし、悪意あるBotだけを正確に制御することです。
そのためには、通信の中身ではなく「振る舞い」を理解するアプローチが不可欠です。Webの主役が人間だけではなくなった今、セキュリティの考え方そのものもアップデートが求められています。
よくある質問(FAQ)
Bot対策とは何ですか?
Bot対策とは、Webサイトにアクセスする自動プログラム(Bot)を識別し、不正なアクセスを防ぐためのセキュリティ対策です。検索エンジンなどの有用なBotと、悪意あるBotを区別することが重要です。
なぜWAFだけではBot対策が不十分なのですか?
WAFはWebアプリケーションへの攻撃を検知・防御する重要な対策ですが、人間に近い振る舞いをするBotや、正規のリクエストを装ってビジネスロジックを悪用するBotは、WAFだけでは判別が難しいケースがあるためです。
Botによる被害にはどのようなものがありますか?
不正ログイン、スクレイピング、チケットや商品の買い占め、広告不正クリックなど、売上やブランドに直接影響する被害が発生します。
Bot対策はどの企業に必要ですか?
ECサイト、メディアサイト、SaaSなど、Webトラフィックが収益に関わるすべての企業にとって重要な対策です。
WAFとBot対策はどちらを導入すべきですか?
両者は役割が異なるため、併用が推奨されます。WAFは脆弱性対策、Bot対策はトラフィック制御を担います。