【2025年最新】クラウド市場動向とAWS/Azure/Google Cloudサービス比較
更新日:2025-09-11 公開日:2025-09-11 by アツシバ
クラウド市場は2025年も急速な進化を続けています。数カ月前の情報ですら古くなってしまうほど、変化のスピードは速く、最新情報のキャッチアップが欠かせません
本記事では、クラウド選定の第一歩として、主要3社 ― AWS、Microsoft Azure、Google Cloud(以降は「GCP」と表記) ― の最新状況を整理します。
この3部作シリーズでは、2025年8月時点の最新情報をもとに、クラウド選定に必要な情報を体系的にお伝えします。
📰2025年クラウド比較シリーズ 【第2部】AI戦略と料金体系 - 2025年のAI戦略と詳細なコスト分析 【第3部】選定ガイドと導入戦略 - 実践的な選定方法と成功のポイント |
2025年クラウド市場の全体像
クラウド選定を始める前に、まず押さえておきたいのが各社の市場シェアです。シェアが全てではありませんが、導入事例の豊富さやパートナーエコシステムの充実度を判断する重要な指標になります。
最新市場シェア分析
Synergy Research GroupのQ2 2025推計(※1)では、グローバル市場シェアは以下のとおりです。
プロバイダー | 市場シェア | 特徴 | 成長要因 |
AWS | 30% | 最大のサービスポートフォリオと実績 | 豊富なサービス群と幅広い顧客層 |
Microsoft Azure | 20% | エンタープライズとの高い親和性 | Microsoft製品との統合性 |
Google Cloud(GCP) | 13% | AI・データ分析に強み | データ分析とAI分野の技術力 |
AWSは約30%のシェアで依然として首位を維持していますが、かつてのような圧倒的な差は縮まってきています。Azureが20%で堅調に成長を続け、Google Cloudも13%と二桁台を確保しています。
この三社で全体の約63%を占めており、残りの37%を中国系クラウドやIBM、Oracleなどが分け合う構造です。企業のクラウド導入を検討する際は、やはりこの三社の比較が最初のステップになるでしょう。
興味深いのは、各社の成長要因が異なることです。AWSは豊富なサービス群とスタートアップから大企業まで幅広い顧客層、Azureはエンタープライズ企業のMicrosoft製品との親和性、Google Cloudはデータ分析とAI分野での技術力が、それぞれの強みとなっています。
基本サービスの徹底比較
各社のクラウドは似ているように見えますが、料金体系・機能・統合性に明確な違いがあります。ここでは、導入判断で重要になる基本サービスを整理します。
コンピューティングサービス
コンピューティングサービスは、クラウド移行の要となる部分です。従来のオンプレミス環境から移行する際、性能や課金方式の違いが運用コストに大きく影響するため、慎重な比較検討が必要になります。
AWS EC2
AWS EC2は多様なインスタンスタイプを提供しており、用途別に選びやすい点が強みです。近年はArmベースのGravitonプロセッサーによる最大(up to)40%の価格性能向上(ワークロード依存)が注目されています。(※2)ただし、選択肢が多い分、適切なインスタンス選択には専門知識が求められます。
Azure Virtual Machines
Azure Virtual Machinesの最大の特徴は、Azure Hybrid Benefitにより既存のWindows Server/SQL Serverライセンスをそのまま活用できる点です。Microsoft製品を多用している企業では、この特典だけで大幅なコスト削減が期待できます。ただし、Linux環境での利用では他社と比べて特別なアドバンテージは少ないのが実情です。
Google Compute Engine
Google Compute Engineは起動1分以降は1秒単位で課金され、継続利用割引も自動適用されます。
分野によって各社の強みが異なり、例えばAzure AD/Defenderとの統合面はAzureが有利、TPU/データ分析面はGCPが強みを発揮するなど、要件に応じた選択が重要です。
課金体系の比較
サービス | 課金単位 | ||
AWS EC2 | 1秒課金(最小60秒)(※3) | ||
Azure VM | 分単位課金(※4) | ||
GCP Compute Engine | 1分以降1秒課金(※5) |
コンテナ・サーバーレス比較
現代的なアプリケーション開発では、コンテナやサーバーレス技術の選択が重要になります。
AWS:成熟したエコシステム
AWSはECS/EKS、Lambda、Fargateという豊富な選択肢を提供し、既存システムの段階的移行から新規開発まで幅広くカバーできます。特にLambda(2014年発表)の成熟度は高く、イベント駆動型アーキテクチャの構築には最適です。
Azure:開発者重視
AzureのAKS(Azure Kubernetes Service)とAzure Functionsは、VS Code拡張など公式ツールでの統合が提供されており、.NET開発者にとっては生産性向上が期待できます。既存の開発フローを大きく変えずにクラウドネイティブ化を進められる点が魅力です。
GCP:Kubernetes中心の設計
GCPはKubernetes発祥のGoogleが提供するGKEは機能が充実しており、自動アップグレードやAutopilotなどの先進機能を提供しています。Cloud RunとCloud Functionsは、Knative技術を活用した設計によりコンテナのランタイム管理が直感的に行えます。
ストレージサービス戦略
データの保存と管理は、クラウド移行において最も慎重に検討すべき要素の一つです。データ損失のリスクや、予想以上のストレージコストの発生を避けるため、各社の特徴をしっかりと理解しておく必要があります。
オブジェクトストレージ比較
AWS S3
業界標準の信頼性 AWS S3は99.999999999%(11 nines)の耐久性を誇り、この数字は業界標準として広く認識されています。S3 Intelligent-Tieringにより、アクセス頻度に応じてストレージクラスを自動変更し、コストを最適化してくれます。(※6)ただし、細かい設定が必要で、初期設定を誤ると想定外の課金が発生する可能性もあります。
Azure Blob Storage
Microsoft製品との親和性 Azure Blob Storageは、Hot/Cool/Cold/Archive層の設定が直感的で、アクセスパターンに応じた細かいコスト管理が可能です。(※7)なお、Teamsのファイル保存先はSharePoint/OneDriveが原則です。Blob Storageは別系のオブジェクトストレージですが、Power Platformのコネクタ等で統合は可能です。
Google Cloud Storage
シンプルさと自動化 Google Cloud Storageの魅力は、シンプルでわかりやすい料金体系です。Autoclassによりストレージクラスの自動最適化が行われ、(※8)管理者の手間を最小限に抑えながらコスト効率を保てます。BigQueryとの統合も優秀で、データ分析パイプラインの構築が容易です。
ブロック・ファイルストレージの実務考慮点
データベースやファイルサーバーの移行では、ブロックストレージとファイルストレージの性能が直接的に業務に影響します。AWS EBS、Azure Disk Storage、Google Persistent Diskは、それぞれ読み書き性能やデータレプリケーション仕様が異なるため、現在のワークロード要件に合わせた選択が重要になります。
特に高いIOPSが必要なデータベースワークロードでは、事前の性能検証が欠かせません。代表例として、EBS io2 Block Express(最大256k IOPS)、Azure Ultra Disk、GCP Hyperdisk など、各社とも高性能オプションを提供していますが、コストと性能のバランスを慎重に検討する必要があります。
データベースサービス選択戦略
データベース選択は、システム全体の性能とコストに長期的な影響を与える重要な判断です。オンプレミスからの移行では、既存のデータベースとの互換性や運用の自動化レベルが成功の鍵を握ります。
リレーショナルデータベース比較
「AWS RDS/Aurora」運用自動化のリーダー
AWS RDS/Auroraは運用自動化と高性能に特化した設計が特徴です。特にAurora Serverlessは、トラフィックの変動が大きいアプリケーションでコスト効率を発揮します。(※9)ただし、高機能な分、従来のMySQL/PostgreSQLから移行する際は動作検証に時間をかける必要があります。
「Azure SQL Database」 SQL Server親和性
Azure SQL Databaseの強みは、オンプレミスのSQL Serverからの移行のしやすさです。オンプレミスのSQL Serverからの高い互換性を重視する場合はAzure SQL Managed Instanceが適しており、Azure SQL Databaseへ移行する場合は一部機能差の検証が必要になります。Power BIとの連携も強力で、既存のBIシステムとの統合が容易です。
「GCP Cloud SQL」分析連携重視
Cloud SQLは、BigQueryとの統合によるデータパイプライン構築が魅力的です。Federated Queries等により、トランザクショナルなデータをCloud SQLで管理し、分析用データをBigQueryで処理するアーキテクチャが簡単に構築できます。
NoSQL・分析データベースの選択指針
DynamoDB、Cosmos DB、Bigtableは、それぞれ異なるスケーラビリティ特性を持ちます。
NoSQL | 課金単位 | ||
DynamoDB(AWS) | エコシステム内での統合性、キー値/ドキュメント型 | ||
Cosmos DB(Azure) | グローバル分散とマルチモデル対応 | ||
Bigtable(GCP) | ワイドカラム型で大規模データ処理に最適化 |
分析基盤の選択戦略 分析基盤では、Redshift、Synapse Analytics、BigQueryの選択が重要になります。
- BigQuery:ペタバイト級の分析に適し、SQLのみで複雑な分析が可能
- Synapse Analytics:Power BIとの連携が強み、Microsoft環境との統合
- Redshift:AWSの豊富なデータ統合ツールとの組み合わせで真価を発揮
まとめ
第1部では、2025年のクラウド市場における三大プロバイダーの基本的な特徴と、主要サービスの比較を行いました。
要点整理
• 市場シェア:AWS 30%、Azure 20%、GCP 13%の3社で63%を占有
• 各社の強み:AWS→豊富なサービス、Azure→Microsoft親和性、GCP→AI・分析特化
• 選択ポイント:用途と既存環境に応じた適切な選択が重要
次回「第2部」では、2025年のAI戦略と料金体系の詳細比較を解説します。
【第2部】の主な内容(次回予定)
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シリーズ記事
📰2025年クラウド比較シリーズ 【第2部】AI戦略と料金体系ー2025年のAI戦略と詳細なコスト分析 【第3部】選定ガイドと導入戦略ー実践的な選定方法と成功のポイント |
【脚注・参考文献】
本記事は2025年8月時点の公開情報に基づいています。最新の価格や機能については各社公式サイトをご確認ください。
2.Amazon EC2 M6g インスタンス – Amazon Web Services
3.オンデマンドインスタンスの料金 - Amazon EC2 (仮想サーバー) | AWS
4.料金 - Windows Virtual Machines | Microsoft Azure
5.VM インスタンスの料金 | Google Cloud
6.永続的ストレージによるデータの耐久性と HA - AWS でのリアルタイム通信
7.BLOB データのアクセス層 - Azure Storage | Microsoft Learn
8.Autoclass を使用する | Cloud Storage | Google Cloud
9.Using Aurora Serverless v2 - Amazon Aurora↩↩