【2025年最新】AWS/Azure/Google Cloudの生成AI戦略と料金体系
更新日:2025-09-29 公開日:2025-09-29 by アツシバ
第1部では、三大クラウドプロバイダーの基本サービスと市場動向について整理しました。第2部では、2025年最大のトピックである各社の生成AI戦略と、実際の導入で最も関心の高い料金体系について詳しく解説します。
📰2025年クラウド比較シリーズ 【第2部】【2025年最新】AWS/Azure/Google Cloudの生成AI戦略と料金体系(本記事) 【第3部】選定ガイドと導入戦略 - 実践的な選定方法と成功のポイント |
前回のおさらい
AWS→ 豊富なサービス群と幅広い顧客層
Azure→ Microsoft製品との高い親和性
Google Cloud(以降は「GCP」と表記)→ AI・データ分析分野での技術的優位性
今回は、これらの特徴が2025年の生成AI競争でどう活かされているか、そして実際のコスト面でどう判断すべきかを見ていきます。
2025年生成AI戦略の全面対決
2025年最大のトピックは、生成AIをいかにビジネスで活用するかです。各クラウドプロバイダーも、この分野での差別化に最も力を入れています。ただし、各社のアプローチには明確な違いがあり、自社の用途に合った選択が重要になります。
AWS:エンタープライズ向けAI基盤の確立
AWSの2025年戦略で注目すべきは、単なる生成AIサービスの提供から、本格的なビジネス活用を支援する基盤整備にシフトしていることです。
Amazon Bedrock AgentCore の詳細
2025年7月にプレビュー公開されたBedrock AgentCore(※1)は、AIエージェントを企業で安全に運用するための包括的なソリューションです。これまでの「AIモデルは使えるが、実際のビジネスプロセスに組み込むのは大変」という課題を解決することを目指しています。
主要コンポーネント
- AgentCore Gateway: 企業の既存APIとAIエージェントを安全に連携
- AgentCore Code Interpreter: セキュアなサンドボックス環境でのコード実行
- AgentCore Identity: 既存認証基盤(Cognito、Microsoft Entra ID等)との統合
- AgentCore Observability: リアルタイムでのAIエージェント動作監視
Claude 4モデルの企業活用
Anthropic社の最新Claude 4 Sonnet/Claude 3.7 SonnetもAmazon Bedrockで利用可能になり、高度な推論能力をエンタープライズ環境で活用できるようになりました。複雑な業務判断のサポート、長文処理による企業規程の理解・要約、コード生成・レビューによる開発プロセスの自動化支援が可能です。
AWSらしく、技術の先進性よりも企業での実用性を重視したアプローチと言えるでしょう。
Microsoft Azure:Microsoft 365エコシステムとの深い統合
Azureの生成AI戦略の最大の強みは、既存のMicrosoft 365エコシステムとの自然な統合です。多くの企業がすでにWord、Excel、Teams、SharePointを業務で使用している中、これらのツール内でAI機能をシームレスに活用できる点は大きなアドバンテージです。
Azure AI Foundry の実践的活用
Azure AI Foundryを中核として、GPT-4.1系モデルを活用した生成AIアプリケーション開発を支援していますが、技術者でない業務ユーザーでも使いやすいUIと、既存の業務フローへの組み込みやすさに重点が置かれています。
活用例
- Officeアプリケーション内AI: Excel(データ分析の自動化)、Word(文書作成補助)、PowerPoint(プレゼン資料の自動生成)
- Teams連携::会議の自動要約、アクションアイテム抽出
- SharePoint活用::社内文書の自動分類・タグ付け、ナレッジベースの自動構築
約6万社超がすでに導入している(※2)という実績も、エンタープライズでの信頼性を裏付けています。「AIを導入したいが、既存の業務フローを大きく変えたくない」という企業には最適な選択肢と言えるでしょう。
GCP:最先端AI技術への一点集中
GCPのAI戦略は、他の2社と比べアプローチが明確に異なります。Googleの本業である検索とAI研究の成果を、クラウドサービスとして直接提供するアプローチです。
Gemini 2.5 Pro の技術的優位性
Googleの多くのGeminiモデルが100万トークン級の長文対応を提供しており(※3)、従来のLLMでは不可能だった大量文書の一括分析や、長文コードの理解・生成が可能とされています。※具体的なモデル別のコンテキスト長は公式モデルページでご確認ください。
技術的特徴
- 超長文処理: 企業の全社規程、大規模システムの仕様書を一括処理
- マルチモーダル対応: テキスト、画像、音声、動画の統合理解
- 高度な推論能力: 複雑な論理思考、数学的問題の解決
実用的活用例
- 法務・コンプライアンス: 契約書の一括レビュー、規制対応チェック
- 技術文書分析: システム設計書の理解、レガシーコードの解析
- 研究開発支援: 大量の学術論文からの知見抽出
ただし、Googleのアプローチは最先端技術重視のため、既存の企業システムとの統合や、非技術者での活用という面では他の2社に比べて敷居が高い面もあります。AI技術自体に強いこだわりがある企業や、データサイエンティストが主導するプロジェクトには最適な選択肢です。
料金体系の詳細分析
クラウド導入で最も気になるのは、やはりコストの問題です。「思ったより高くついた」「予算をオーバーしてしまった」という話をよく聞きますが、各社の料金体系を正しく理解することで、こうしたリスクは大幅に減らせます。
基本料金体系の比較
AWS | Azure | GCP | |
課金単位 | 秒単位(最小60秒) | 分単位(起動後5分未満停止も課金)(※4) | 秒単位(1分以降) |
予約割引 | リザーブドインスタンス /Savings Plans(1-3年) |
予約インスタンス /Azure Hybrid Benefit |
Committed Use Discount (1-3年) |
スポット利用 | 最大90%割引(※5) | Spot Virtual Machines | Spot VM(最大約91%割引)(※6) |
データ転送 | アウトバウンド課金 | アウトバウンド課金 | アウトバウンド課金 |
AWS
リザーブドインスタンス vs Savings Plans
- リザーブドインスタンス: 特定インスタンスタイプに対する1-3年契約、最大75%割引
- Savings Plans: より柔軟な割引制度、EC2、Lambda、Fargateに適用可能
隠れたコスト要因
- データ転送料金: リージョン間、インターネットへの転送は高額になりがち
- API利用料金: 大量のAPI呼び出しで予想外のコスト
- ストレージアクセス料金: 頻繁なデータアクセスでコスト増
Azure
Azure Hybrid Benefit の実際の効果
既存のWindows Server/SQL Serverライセンスを持つ企業では、Azure Hybrid Benefitにより最大76%のコスト削減(※7)が可能です(Reserved Instanceとの併用時)。適用条件としてSoftware Assurance付きのライセンスが必要ですが、多くの大企業がMicrosoftとEnterprise Agreement(EA)を締結しており、Azureサービスも含めた包括的な割引が適用されます。
GCP
継続利用割引(Sustained Use Discounts)
GCPの大きな特徴は、特別な契約なしに自動適用される継続利用割引です。月間利用時間に応じて自動的に割引適用(最大30%)され、ユーザーが特別な設定をする必要がありません。
Per-Second Billing の実際の効果
1秒単位の課金により、特に開発・テスト環境や、バッチ処理などの短時間利用で大きなコスト効果を発揮します。
AI活用のコスト分析
生成AI時代において、各社のAI料金体系を理解することは極めて重要です。モデル利用料、API呼び出し料、データ処理料など、複数の料金要素が絡み合うため、実際の利用パターンを想定した比較が必要です。
AI料金体系の比較
AWS Bedrock(2025年8月時点)
- Claude Sonnet: 入力$0.003/1K tokens、出力$0.015/1K tokens
※リージョンにより変動の可能性あり、最新価格は公式サイトでご確認ください - Titan Text: Bedrock価格ページのモデル選択で最新料金をご確認ください
- AgentCore: 現在プレビュー期間中は無料(2025年9月16日まで)、それ以降の価格については、公式ページでご確認ください(※8)
Azure OpenAI Service
- 料金は頻繁に更新されるため、最新のGPT-4o系やモデル別価格は公式サイトでご確認ください
- Enterprise向け大量利用時の交渉価格あり
GCP AI
- Gemini Pro:料金体系は提供方法(Vertex AI/Gemini API)により異なります
- BigQuery ML:既存データでのML処理統合
- 最新価格は公式のVertex AI・Gemini API料金ページでご確認ください
実用的なコスト試算
AI料金の試算には多くの変数(モデル選択、入出力の比率、トークン数など)が影響するため、実際の導入前には以下の点を考慮した詳細な試算が重要です。
試算時の考慮点
- モデルごとの料金差: 同じプロバイダーでも性能とコストのトレードオフが異なる
- 入出力比率: 一般的に出力トークンの方が高額
- 使用パターン: バッチ処理か対話型かで最適な選択が変わる
- 割引制度: 大量利用時の企業向け交渉価格の活用
隠れたコスト要因
- データ準備: 学習データの前処理、クリーニング費用
- モニタリング: AI出力の品質監視、ログ保存費用
- 統合開発: 既存システムとの連携開発費用
実際の料金は各社の最新価格表でご確認いただき、PoC(概念実証)を通じた実測による評価を推奨します。
まとめ
第2部では、2025年の生成AI競争と料金体系について詳細に分析しました。
AI戦略 |
料金体系 | |
AWS | 企業での実用化支援に特化 AgentCoreで本格運用支援 |
柔軟な割引制度 新無料枠で初期評価しやすく |
Azure | Microsoft 365との統合で 業務フロー改善 |
Hybrid Benefitで既存資産活用 EA統合でコスト効率 |
GCP | 最先端技術重視 技術的優位性を活用 |
自動割引と細かい課金で 無駄なコストを削減 |
第3部では、これらの分析を基に「実際にどう選定すべきか」の具体的な方法論をお伝えします。
シリーズ記事
📰2025年クラウド比較シリーズ 【第2部】AWS/Azure/Google Cloudの生成AI戦略と料金体系(本記事) 【第3部】選定ガイドと導入戦略ー実践的な選定方法と成功のポイント |
【脚注・参考文献】
本記事は2025年8月時点の公開情報に基づいています。最新の価格や機能については各社公式サイトをご確認ください。
2.Announcing the availability of Azure OpenAI Data Zones and latest updates from Azure AI | Microsoft Azure Blog
3.長いコンテキスト | Gemini API | Google AI for Developers
4.Clarification on Azure VM Billing for Short Runtime (Less than 5 Minutes) – Effective 1st June 2025 - Microsoft Q&A
5.Amazon EC2 スポットインスタンス | AWS
6.Spot VM | Google Cloud
7.Azure ハイブリッド特典の価格設定 | Microsoft Azure
8.Amazon Bedrock AgentCore (プレビュー) の料金 – AWS