BCP・DR対策の始め方|中小企業が今すぐ着手できる3ステップ
更新日:2026-07-08 公開日:2025-07-24 by Bitmoss
「BCPやDRが重要なのは分かっているけれど、何から始めればいいか分からない」
このような悩みを持つ企業は少なくありません。
しかし、最初から大規模なDRサイトや高額なシステムを導入する必要はありません。重要なのは、自社にとって必要な復旧レベルを整理し、できるところから段階的に対策を進めることです。
本記事では、BCP・DRの基本を押さえながら、中小企業でも始めやすい3ステップと、検討時に押さえておきたいポイントを解説します。
結論:BCP・DR対策は「小さく始める」ことが重要
BCP・DR対策は、一度に完成させるものではありません。
まずは重要データのバックアップから始め、復旧手順を整備し、必要に応じてクラウド活用やDRサイト構成へ発展させていくのが現実的です。
重要なのは、完璧な対策を最初から目指すことではなく、「止まっても復旧できる仕組み」を段階的に整えることです。
なぜ今BCP・DR対策が必要なのか
BCP・DR対策は、大企業だけのものではありません。
警察庁の公表資料によると、2025年のランサムウェア被害報告件数は226件で、依然として高水準が続いています。組織規模別では前年と同様に中小企業が約6割を占め、復旧に1,000万円以上を要した組織は全体の5割を超えました。
それにもかかわらず、ランサムウェア被害に遭った企業のうちBCPを策定済みだったのは約18%にとどまります。「もし明日サーバーが止まったら」というリスクへの備えは、多くの企業でまだ手つかずのままです。
ただし、身構える必要はありません。クラウドバックアップや復旧手順の整備など、小さな対策から始めることで、事業停止リスクを段階的に減らせます。
BCP・DR対策を始める前に知っておきたいこと
BCPとDRの違い
BCPとDRは混同されやすい言葉ですが、対象範囲が異なります。
|
BCP(Business Continuity Plan)=事業を継続するための計画 DR(Disaster Recovery)=ITシステムを復旧するための対策 |
BCPは、災害や障害が発生した場合でも、会社全体として事業を継続するための計画です。
一方、DRはBCPの中でも、サーバー、ネットワーク、データベース、アプリケーションなど、ITシステムを復旧するための対策を指します。
つまり、DRはBCPを実現するための重要な要素のひとつです。
BCP・DR対策を後回しにすると何が起きるのか
BCP・DR対策を後回しにすると、障害や災害が発生したときに業務再開までの時間が長引く可能性があります。
特に注意したいのは、以下のようなケースです。
- バックアップはあるが、復元手順が分からない
- 復旧に必要なサーバーやネットワークの準備がない
- 担当者しか復旧手順を把握していない
- バックアップデータが古く、業務再開に使えない
- 復旧テストをしておらず、実際に戻せるか分からない
バックアップを取得していても、復元できなければ業務は再開できません。
BCP・DRで重要なのは「データを保存すること」ではなく、「業務を再開できる状態」を準備しておくことです。
BCP・DRの全体像について詳しく知りたい方は、『BCP・DRとは?違い・必要性・クラウド対策までわかりやすく解説』も参考にしてください。
バックアップだけでは不十分な理由
バックアップはBCP・DR対策の土台です。
しかし、バックアップだけでは十分とは言えません。
バックアップは、主に「データを守る」ための仕組みです。一方でDRでは、データだけでなく、サーバー、ネットワーク、アプリケーション、復旧手順まで含めて準備する必要があります。
- バックアップ:データを守る
- DR:システムを復旧する
- BCP:事業を継続する
たとえば、バックアップデータがあっても、復元先のサーバーがない、ネットワーク設定が分からない、アプリケーションが起動しない、という状態では業務を再開できません。
バックアップは重要ですが、それを使って業務を再開できるところまで設計して初めて、BCP・DR対策として機能します。
クラウドを活用したBCP・DR設計については、『クラウド時代のBCP・DR対策とは?被害と対策を解説』で詳しく解説しています。
では、具体的に何から手をつければよいのでしょうか。中小企業でも始めやすい進め方を、3つのステップに分けて解説します。
中小企業のBCP・DR対策|まず決めることと3ステップ
BCP・DR対策を始めるときは、いきなりツールやサービスを選ぶのではなく、まず自社の要件を整理することが重要です。
まず決める3つのこと
| 決めること | 考え方 |
|---|---|
| 守るべきシステム | すべてのシステムを同じレベルで守る必要はありません。まずは業務停止の影響が大きいシステムを優先します。 |
| 許容できる停止時間 | 何時間まで停止を許容できるかを決めることで、RTO・RPOの目安が見えてきます。 |
| バックアップ方法 | クラウドに保管するのか、オンプレミスと併用するのか、復旧要件に合わせて選びます。 |
すべてを一度に整備する必要はありません。まずは重要システムを対象に、小さく始めることが現実的です。
3ステップの全体像
多くの企業では、最初からDRサイトを構築するのではなく、クラウドバックアップから始めるのが現実的です。ここでは、段階的にBCP・DR対策を強化する3つのステップを紹介します。
| ステップ | 目的 | 内容 | 目標 | 費用感 |
|---|---|---|---|---|
| Step1 | クラウドバックアップ | 共有フォルダやデータベースをクラウドに定期コピー | 数日以内 | 小 |
| Step2 | 復旧手順の整備 | スナップショット、世代管理、復元テストを実施 | 1日以内 | 中 |
| Step3 | DR構成の検討 | 別リージョン、別ゾーン、DRサイトなどを検討 | 数時間以内 | 中〜大 |
Step1:クラウドバックアップから始める
最初の一歩として取り組みやすいのが、重要データのクラウドバックアップです。
社内ファイル、データベース、業務システムの設定ファイルなどをクラウドに定期的に保存することで、社内サーバーや拠点に障害が起きてもデータを守りやすくなります。
この段階では、完璧なDR構成を目指す必要はありません。まずは「重要データが社外にも保管されている」状態を作ることが大切です。
Step2:復旧手順とテストを整備する
バックアップを取得したら、次に必要なのは復旧手順の整備です。
どのデータを、誰が、どの手順で復元するのかを明確にしておきます。
また、バックアップは取得するだけでなく、定期的に復元テストを行うことが重要です。実際に戻せることを確認しておくことで、障害時の混乱を減らせます。
Step3:必要に応じてDR構成を検討する
重要システムについては、バックアップだけでなくDRサイト・マルチゾーン構成の検討も必要になります。
たとえば、別リージョンへのバックアップコピー、別ゾーンへのシステム配置、DRサイトの整備などが選択肢になります。
中小企業でよくある設定例は、次のとおりです。
- ファイル共有:クラウドストレージへ週次バックアップし、世代管理を行う
- データベース:毎日スナップショットを取得し、一定期間保持する
- 業務サーバー:定期的にイメージバックアップを取得し、復旧テストを実施する
- 重要システム:停止影響に応じて、別リージョンや別ゾーンへの配置を検討する
重要なのは、すべてのシステムに同じレベルの対策をすることではなく、業務影響が大きいものから優先順位を付けて対策することです。
DRサイトの配置やマルチゾーン構成については、『DRサイトはなぜ国内が選ばれるのか?マルチゾーン構成の考え方』も参考にしてください。
よくある質問
Q1:SaaSしか使っていない場合もBCP・DRは必要ですか?
はい、必要です。
SaaSを利用していても、障害時の代替手段、重要データのエクスポート、契約情報やログの保管、社内連絡手段などを確認しておくことが重要です。
Q2:バックアップだけあれば十分ですか?
バックアップは重要ですが、それだけでは十分ではありません。
復元先の環境、復旧手順、担当者、ネットワーク設定まで整備しておくことで、実際に業務を再開できる状態になります。
Q3:DRサイトは中小企業には大げさではありませんか?
すべての企業に本格的なDRサイトが必要なわけではありません。
まずはクラウドバックアップや復旧手順の整備から始め、業務停止の影響が大きいシステムについて段階的にDR構成を検討するとよいでしょう。
今すぐできるチェックリスト
以下の8項目を確認することで、BCP・DR対策を始める前に整理すべきポイントを把握できます。
まとめ:BCP・DRは段階的に整えることが重要
BCP・DR対策は、一度に完成させるものではありません。
まずは重要データを守るためのバックアップから始め、復旧手順を整備し、必要に応じてDRサイトやクラウドを活用した構成へ発展させていくことが現実的です。
事業継続に必要なのは、「完璧な対策」ではなく、「止まっても復旧できる仕組み」を段階的に整えることです。
BCP・DR対策、何から始めるべきか迷っていませんか?
フューチャースピリッツでは、AWS・さくらのクラウド・自社ホスティングを活用し、
中小企業のBCP・DR対策やクラウドバックアップ、DR構成の検討を支援しています。
「自社に合った対策を相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。
参照サイト
|
警察庁:サイバー空間をめぐる脅威の情勢等 |