さくらのクラウドを無理なく始めるには?導入から運用開始までのポイントを解説
更新日:2026-09-30 公開日:2024-11-20 by Bitmoss
さくらのクラウドを無理なく利用し続けるためには、クラウド環境を構築することだけでなく、「構築後に誰が、どのように運用するか」まで導入時点で考えておくことが重要です。
さくらのクラウドでは、サーバーやネットワーク、ストレージ、データベースなどを組み合わせ、Webサイトや業務システムの要件に応じたクラウドインフラを構築できます。
一方で、監視やバックアップ、障害対応、セキュリティ対応などの運用業務は、クラウドを導入した後も継続して発生します。特に情シスやインフラ担当者が少ない企業では、構築後の運用負荷まで考えずに導入すると、担当者に業務が集中してしまうことがあります。
この記事では、さくらのクラウドを導入する際の基本的な流れと構成例、さらに運用開始前に整理しておきたいポイントを解説します。
この記事のポイント
- さくらのクラウドは、要件に応じて複数のサービスを組み合わせて構成できる
- クラウド選定だけでなく、構築後の監視・保守まで含めて考えることが重要
- 少人数で運用する場合は、担当範囲や障害時の対応方法を導入前に決めておく
- すべてを自社で運用せず、必要に応じて外部の運用支援を組み合わせる方法もある
さくらのクラウドを無理なく始めるには?
さくらのクラウドは、さくらインターネット株式会社が提供するパブリッククラウドです。
仮想サーバーをはじめ、ストレージやネットワーク、データベース、ロードバランサー、監視などを組み合わせ、Webサイトや業務システムのインフラを構築できます。
ただし、クラウドには多くの機能があるため、利用できるサービスを増やせばよいわけではありません。
重要なのは、システムに必要な性能・可用性・セキュリティを満たしながら、自社の担当者が無理なく管理できる構成と運用体制を作ることです。
そのため、さくらのクラウドを導入する際は、次の2つをセットで考える必要があります。
- どのようなクラウドインフラを構築するか
- 構築したインフラを誰がどのように運用するか
さくらのクラウドそのものの特徴や料金、AWSとの違いについて詳しく知りたい方は、さくらのクラウドの特徴・料金・AWSとの違いもあわせてご覧ください。また、AWSとの詳しい比較や「結局どちらを選ぶべきか」という検討ポイントは、さくらのクラウドとAWSの料金・機能・運用の違いで解説しています。
さくらのクラウドの構成例
さくらのクラウドでは、システムの要件に応じて複数のサービスを組み合わせてインフラを構成できます。
たとえばWebサイトであれば、Webサーバーやデータベースだけでなく、アクセス量やセキュリティ要件に応じて、ロードバランサー、CDN、WAFなどを組み合わせることがあります。

上図は、実際のご提案で用いた構成図の一部です。
Webサーバーやデータベースを配置し、必要に応じてCDNやWAFなどを組み合わせています。このように、用途やアクセス規模、求める可用性・セキュリティ水準に応じて構成を検討します。
可用性を高めたい場合
Webサイトの停止リスクを抑えたい場合は、ロードバランサーの配下に複数台のWebサーバーを配置するなど、障害時にもサービスを継続しやすい構成を検討します。
アクセス量の変動が大きいシステムでは、負荷に応じてリソースを変更する仕組みも選択肢になります。
セキュリティを強化したい場合
インターネットに公開するWebサイトでは、サーバーだけでなく、通信経路やWebアプリケーションを含めたセキュリティ対策が必要です。
CDNやWAFなどを組み合わせることで、Webサイトのパフォーマンス向上やサイバー攻撃への対策を行うこともできます。
小規模なシステムではシンプルな構成も選択肢
一方で、すべてのシステムに複数台構成や高度な機能が必要なわけではありません。
アクセス量が限定的で、サーバー1台でも要件を満たせる場合は、シンプルな構成の方が費用だけでなく運用負荷も抑えやすくなります。
用途によっては、「さくらのVPS」など別のサービスが適している場合もあります。
費用を抑える運用や構成設計のポイントについては、さくらのクラウドの料金とコストを抑える設計・運用で詳しく解説しています。
クラウドでは、構成を複雑にすること自体が目的ではありません。
必要な性能・可用性・セキュリティを満たしながら、構築後も無理なく運用できる構成にすることが重要です。
導入前に整理しておきたい4つのポイント
さくらのクラウドで使用するサービスを決める前に、まずシステム側の要件を整理します。
1. システムに求める可用性と性能
最初に確認したいのが、システム停止が事業へ与える影響と、想定するアクセス量です。
- サーバーは1台でよいか、冗長化が必要か
- アクセス集中への対策が必要か
- どの程度の停止時間まで許容できるか
- 将来的な利用者数やデータ量の増加を想定する必要があるか
こうした条件によって、必要となるサーバー台数やネットワーク構成も変わります。
2. セキュリティ要件
Webサイトや業務システムでは、必要なセキュリティ対策も事前に整理します。
- インターネットから公開する範囲
- アクセス制御の方法
- WAFなどのWebセキュリティ対策
- ログの取得・保管
- OSやミドルウェアの脆弱性対応
クラウド基盤だけでなく、OSやアプリケーション側まで含め、誰がどこまで管理するのかを明確にしておくことが重要です。
3. バックアップと復旧方法
バックアップについては、「取得しているか」だけではなく、障害発生時にどのように復旧するかまで決めておきます。
- どのデータをバックアップするか
- どのくらいの頻度で取得するか
- 何世代保管するか
- 障害発生時に誰が復旧するか
- どの程度の時間で復旧する必要があるか
事業への影響が大きいシステムでは、バックアップだけでなくBCP・DRまで含めて検討する場合もあります。
4. 構築後の運用体制
特に重要なのが、構築したクラウド環境を誰が運用するかです。
クラウド導入後も、監視、障害対応、バックアップ確認、セキュリティ対応、OS・ミドルウェアのアップデートなど、継続的な作業が発生します。
「クラウドを構築できること」と「継続して運用できること」は別の問題です。
情シスやインフラ担当者が少ない場合は、構築段階から運用負荷を考慮しておく必要があります。
少人数でのクラウド運用について詳しく知りたい方は、少人数情シスでも回るクラウド運用の考え方も参考にしてください。
さくらのクラウド導入から運用開始までの5ステップ
実際のクラウド導入では、最初から「さくらのクラウドを使う」と決めて構成を考えるとは限りません。
まずシステムの要件を整理したうえで、クラウドや構成を選定し、運用開始までの準備を進めます。
フューチャースピリッツでは、おおむね次のような流れでクラウドインフラの設計・構築・運用を進めています。
| プロセス | 主な内容 |
|---|---|
| 1. ヒアリング・要件整理 | システムの用途、アクセス規模、可用性、セキュリティ、予算、現在の運用体制などを確認します。制作会社・開発会社が関わる場合は、アプリケーション側の要件も整理します。 |
| 2. クラウド・構成選定 | 整理した要件をもとに、さくらのクラウドを含む選択肢から適したクラウド基盤を検討し、必要なサーバーやネットワークなどの構成を決めます。 |
| 3. 構築・設定 | 決定した構成に沿ってクラウド環境を構築し、サーバー、ネットワーク、監視、セキュリティなどを設定します。 |
| 4. テスト・運用準備 | システムの動作確認に加え、監視設定やバックアップ、障害時の連絡方法など、運用開始後に必要となる項目を確認します。 |
| 5. 運用開始 | システムの公開・利用開始にあわせて監視や保守を開始します。運用開始後も、障害対応やアップデート、構成変更などに継続して対応します。 |
運用開始前に決めておきたい業務
クラウド環境を構築した後は、安定して使い続けるための運用が始まります。
少なくとも、次のような業務について担当者や対応方法を決めておくとよいでしょう。
| 運用項目 | 確認しておきたいこと |
|---|---|
| 監視 | 何を監視するか、異常を検知した際に誰へ通知するかを決めます。 |
| 障害対応 | 障害発生時の一次切り分け、連絡先、復旧作業の担当範囲を整理します。 |
| バックアップ | バックアップの取得状況だけでなく、必要なときに復旧できるかを確認します。 |
| セキュリティ | OS・ミドルウェアの更新、脆弱性対応、アクセス権限、ログなどを継続して管理します。 |
| 変更・メンテナンス | 構成変更やアップデートを誰が判断し、誰が作業するのかを整理します。 |
これらを特定の担当者だけに依存させると、休暇・異動・退職などをきっかけに運用が滞る可能性があります。
特に情シス1〜2名程度でクラウドを管理する場合は、担当者しか分からない運用を増やさず、手順や責任分担を整理しておくことが重要です。
自社だけで運用するか、運用支援を利用するか
クラウド運用では、「すべて自社で対応する」か「すべて外部へ任せる」かの二択で考える必要はありません。
たとえば、システムの方針や予算、構成変更の判断は自社で行い、24時間365日の監視や障害一次対応など、継続的に発生する作業を外部へ任せる方法もあります。

上図は、お客様ご自身でさくらのクラウドを運用する場合と、フューチャースピリッツが運用を支援する場合の運用負荷を簡易的に整理したものです。
重要なのは、自社で持つべき判断と、外部へ任せられる運用作業を切り分けることです。
運用を外部へ任せることで、自社の担当者がシステム企画や改善、社内ユーザーへの対応など、本来注力したい業務へ時間を使いやすくなる場合もあります。
まとめ|構築後に無理なく運用できるかまで考える
さくらのクラウドでは、サーバーやネットワーク、データベース、セキュリティなどを組み合わせ、システム要件に応じたクラウドインフラを構築できます。
一方、クラウド環境を作ることはゴールではありません。
監視、障害対応、バックアップ、セキュリティ、アップデートなど、運用開始後に発生する業務まで含めて設計することが、無理なくクラウドを使い続けるためのポイントです。
特に少人数の情シスやインフラ担当者で運用する場合は、すべてを自社だけで抱え込まず、外部の運用支援を組み合わせる方法も検討するとよいでしょう。