さくらのクラウド活用入門(上)無理なく始めるクラウド運用
更新日:2025-12-11 公開日:2024-11-20 by 神戸
クラウドインテグレーション事業本部の神戸です。
フューチャースピリッツは2024年11月に、国産クラウド基盤を活用した「さくらのクラウド」構築・運用パック をリリースしました。サービスの詳細は、こちらのページをご覧ください。
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今後フューチャースピリッツでは、さくらインターネット株式会社が提供するパブリッククラウド「さくらのクラウド」を、より便利かつ安心してご利用いただくためのご支援を行っていきます。
リリースを記念し、全3回にわたり 「さくらのクラウドを使うとどんなことができるのか」 をテーマにした記事をお届けします。
第1回となる本記事では、ウェブサイトのインフラを用意する際の基本的な流れを「さくらのクラウド」を中心に解説します。第2回では、多くの方が気にされる 「結局、どのクラウドサービスを選ぶべきか?」 の検討ポイントを整理します。第3回では、さらに重要な 「費用についての基本的な考え方」 を取り上げる予定です。
さくらのクラウドとは?
ウェブサイトや業務システムのインフラとして、クラウドにはさまざまな活用方法があります。一方で、効果的かつ安全に運用するには、インフラエンジニアの専門知識が不可欠です。
フューチャースピリッツは、1996年の創業以来培ってきたホスティングサーバーやAWSの構築・運用ノウハウを背景に、「さくらのクラウド」を活用したインフラ基盤の設計・構築・運用支援 を行っています。お客様の事業成長を支えるクラウドインフラパートナーとして、今後も伴走していきます。
とはいえ、「さくらのクラウドで何が実現できるのか」 を具体的にイメージできない方も多いのではないでしょうか。ガバメントクラウドに採用されている AWS / Google Cloud / Microsoft Azure / Oracle Cloud などと比べると、「パブリッククラウドとしてのさくらのクラウド」の認知は、まだこれからと言えるかもしれません。
ホスティング分野では「さくらのVPS」などが国内で高い知名度と支持を得ている一方、「クラウド」と聞いてまずAWSを思い浮かべる方は多く、「さくらのクラウド」を連想する方は相対的に少ない状況です。
さくらのクラウドは 2011年11月 にサービスインし、2024年時点で13年目を迎えています。サービス開始以降、顧客数は順調に増加しており、とりわけ 2023年に ガバメントクラウドとして選定されたこと で、一気に注目度が高まりました(厳密には、2025年度末までに全ての技術要件を達成することを条件とした選定です)。このビッグニュースをきっかけに、「国産クラウド」としてのさくらのクラウドに関心を寄せる企業が増えています。
さくらのクラウドを用いたインフラ構成とは?
さくらのクラウドは、公共部門向けに限られたサービスではありません。他のパブリッククラウドと同様に、複数のサービスを組み合わせてインフラストラクチャーを構成し、ウェブサイトや業務システムの基盤を構築できるサービス群 です。
具体的なサービスラインナップは、さくらのクラウドの 製品一覧 に網羅されています。ネットワーク構成のすべてをさくらのクラウドだけで完結させる必要はなく、他社のCDNやストレージなど外部サービスと組み合わせることも可能です。

上図は、実際のご提案で用いた構成図の一部です。AWSなどと同様に、コンピューティング・データベース・CDN・WAF などの要素を組み合わせて、要件に応じたクラウドインフラを構成します。ネットワークの基礎的な考え方はほぼ共通しているため、すでにAWSやホスティングサーバーをご利用中の方であれば、比較的スムーズに「さくらのクラウド」にも馴染んでいただけるはずです。
一方で、サーバー1台で完結する規模であれば、「さくらのVPS」や当社の「フューチャーウェブVPS」で十分なケースもあります。実際、単一サーバー構成の方が費用対効果に優れるユースケース も少なくありません。そのようなシンプル構成では要件を満たせない場合に、さくらのクラウドで構築したネットワークを活用することで、より柔軟かつ拡張性の高いインフラが実現できます。
たとえば、次のような要件が挙げられます。
- 複数台のウェブサーバーを配置し、トラフィックの変動に応じてオートスケーリングしたい
- CDNやWAFを組み合わせて、パフォーマンスとセキュリティを強化したい
- 時間課金のGPUコンピューティングを、必要なときだけ利用したい
こうした要件に対して、スケーラビリティ(拡張性)とエラスティシティ(弾力性)というクラウドならではの強み を生かすことで、費用対効果の高いインフラ構築・運用が可能になります。
どうやって最適な構成を考えていくか?
「お客様にとってベストなクラウドインフラとは何か」 をご一緒に考える場面こそ、フューチャースピリッツの経験と知見が最も発揮される場面だと考えています。
さくらのクラウドであっても他クラウドであっても、基本的な提案プロセスは大きく変わりません。おおよそ以下の5つのステップを経て、お客様のウェブサイトやシステムを支えるインフラをデリバリーします。
| プロセス | アクション |
| 1.ヒアリング | お客様の要件を詳細にお伺いし、構成検討に必要な情報を整理します。この段階で、どのパブリッククラウドを採用するかを検討します。あわせて制作会社・開発会社とも可能な限り連携し、インフラとアプリケーションの間で要件の齟齬が生じないように進めます。 |
| 2.構成・見積提案 | 構成図・見積書・月額利用料シミュレーションを作成し、インフラ構成案としてご提案します。 |
| 3.構築 | ご発注後、インフラ環境の構築に着手します。作業の過程で見えてくる細かな要件や調整事項についても、お客様や制作会社と連携しながら詰めていきます。 |
| 4.納品・検収 | 納品書やパラメータシートなどのドキュメントをお渡しし、実際のインフラ環境をご確認いただきます。必要に応じて設定の微調整にも対応します。 |
| 5.運用・監視・保守 | 監視や保守を開始するタイミングは案件により異なりますが、一般的にはウェブサイトの一般公開と同時にスタートすることが多いです。フューチャースピリッツでは、24時間365日の監視サービスを通じて、お客様のウェブサイトが常時正常に稼働し続けるよう支援します。 |

上図は、お客様ご自身でさくらのクラウドを運用する場合と、フューチャースピリッツが間に入って運用を支援する場合の「運用負荷の違い」 を簡易的に整理したものです。
全体のプロセスは、さくらのクラウドであってもAWSであっても大きく変わりません。ただし、最初のヒアリング結果を踏まえ 「どのクラウドサービスを採用するか」 を決める工程は、インフラ視点では最も難しく、かつ最も重要なポイントになります。
パブリッククラウドやホスティングを選定する際には、「お客様」「インフラ担当」「制作・開発担当」のそれぞれが異なる観点を持ちます。代表的な視点を整理すると、次のようになります。
| お客様観点 | コストパフォーマンスを最大化したい 予算の見通しをはっきり立てたい |
| インフラ会社観点 | 技術文書やサポートが手厚いサービスを使いたい セキュリティ水準をしっかり確保したい |
| 制作・開発会社観点 | 要件を満たすソフトウェアを開発しやすい環境を選びたい チームが使い慣れた環境を利用したい |
このように、パブリッククラウドにもホスティングサーバーにも、それぞれ長所と短所があります。それらを比較検討しながら「落としどころ」を探ることが、インフラ選定の肝になります。
さくらのクラウドには、国産クラウドならではの強みや、他クラウドと比較した際の特徴的なメリットが数多く存在します。 一方で、他クラウドに優位性がある領域ももちろんあります。
次回の記事では、こうしたポイントを踏まえながら、「さくらのクラウドを選ぶべきケースはどのようなものか」 をわかりやすく整理していきます。