2025年4月、Googleは当初予定していたChromeでのサードパーティCookie(3rd Party Cookie)廃止を再び見直し、「完全廃止ではなく、ユーザーの選択に委ねる」という新方針を発表しました。
この変更により、利用者の同意がある場合に限り、今後もサードパーティCookieの使用が継続可能となります。
サードパーティCookieは、長年にわたりWeb上のユーザー行動を追跡し、広告の最適化や効果測定に活用されてきました。一方で、プライバシー保護の観点からAppleのSafariやMozillaのFirefoxなど、主要なブラウザではすでにそのサポートが終了。Google Chromeも段階的廃止を進めてきましたが、業界・ユーザーへの影響や代替技術の成熟度を踏まえ、慎重な対応を取っています。
本記事では、この方針転換の背景と今後の展望、企業やマーケターが講じるべき対応策について解説します。
Chromeの方針変更の背景と現状
Googleはこれまで、2022年 → 2024年末 → 2025年初と、サードパーティCookie廃止を段階的に延期してきました。主な理由は以下の通りです:
・代替技術(Privacy Sandbox等)の実装が不十分
・世界各国の規制当局との協議が継続中
・プライバシーと利便性のバランス確保が難航
2025年春には「Cookieの一律廃止ではなく、ユーザーが個別に管理できる仕組みを導入する」との方針を発表。これにより、Chromeでも引き続きサードパーティCookieの使用は可能ですが、ユーザーの許諾が前提となります。
長期的には「脱Cookie」時代へ:求められる対応とは?
今回の方針変更により急激な変化は避けられましたが、長期的にはサードパーティCookieに依存しない体制への移行が必須です。今後は以下のような技術や取り組みがカギを握ります。
ファーストパーティデータの活用
企業が自社サイト上で直接取得できるファーストパーティCookieを中心に、ユーザーの行動履歴や購買履歴を把握し、CRMと連携したパーソナライズ施策を強化する動きが進んでいます。
Google Analytics 4(GA4)もファーストパーティCookieを前提とした設計となっており、プライバシーに配慮しながらの分析が可能です。
サーバーサイドトラッキングの導入
クライアント(ブラウザ)側ではなく、サーバー側でユーザー行動を収集・処理する手法です。アドブロッカーの影響を受けにくく、セキュリティ面でも優位性があります。CRMやCDPと連携することで、より精度の高いターゲティングや分析が実現可能です。
プライバシー強化技術の導入
匿名化、データの最小化、暗号化などを含むプライバシー保護技術の導入は、ユーザーとの信頼関係構築に直結します。トラストシグナル(SSL、プライバシーポリシー、認証マークなど)を明示することも、ユーザー離脱を防ぐ重要な対策です。
Privacy SandboxやAppleのITPへの理解
Googleは「Privacy Sandbox」構想のもと、サードパーティCookieに代わる技術を開発中です。
技術名 | 概要 |
---|---|
Topics API | 閲覧履歴に基づく興味関心ターゲティング |
Protected Audience API | 匿名化されたリマーケティング広告 |
Attribution Reporting API |
コンバージョン計測の匿名化 |
SafariではすでにIntelligent Tracking Prevention(ITP)が実装済みで、ユーザーのトラッキングを厳しく制限しています。今後、こうした技術の理解と適応が広告運用における差別化要素となっていきます。
すぐに取り組むべき5つのポイント
データの透明性と許諾管理
Cookieバナーやポリシーで利用目的を明示し、明確な同意を取得
データセキュリティの強化
アクセス権管理・暗号化・ログ管理などの実装
収集範囲の見直し(最小化・匿名化)
本当に必要な情報だけを扱う設計に
ユーザーによる選択肢の確保(オプトアウト導線の整備)
信頼性の可視化(常時SSL、認証バッジなど)
ブラウザごとの対応状況
ブラウザ | サードパーティCookie対応 |
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Safari | ブロック済(ITP導入済) |
Firefox | ブロック済 |
Chrome | 同意ベースで継続利用可能(2025年時点) |
いま重要なのは“柔軟な備え
ChromeにおけるサードパーティCookie廃止は見送られたとはいえ、「脱Cookie」「ゼロパーティ/ファーストパーティデータ中心」へのシフトは確実に進んでいます。
企業のWeb担当者・マーケティング担当者は、今後の制度変更や技術トレンドを常にウォッチしながら、段階的な対応を進めることが求められます。
継続的に見直しながら、ユーザーの信頼を損なわない形でマーケティング施策の最適化を図っていきましょう。