依頼対応がスムーズに!セキュリティチェックシート記入の実践ガイド
更新日:2025-07-10 公開日:2025-07-10 by アツシバ
取引先や委託元から「セキュリティチェックシートの記入をお願いします」と言われたとき、「何度も同じような対応が続く…」「項目が多くて手間がかかる…」と感じた経験はないでしょうか。
しかしチェックシートは単なる書類仕事ではありません。的確な回答は自社の信頼性を高め、ビジネスを円滑に進めるカギになります。
本記事では記入を依頼される側の立場から、チェックシートをスムーズかつ効果的に提出するためのポイントを解説します。
セキュリティチェックシートとは
委託先の情報セキュリティ体制を標準化された質問に沿って可視化する質問表です。多くのチェックシートは、ISO/IEC 27001やNIST CSFなどの国際的な情報セキュリティ規格を基に作成されています。回答者は、それらに沿って自社の管理策、運用状況、証跡の有無を具体的に記載する必要があります。
なぜ提出を求められるのか
取引先がチェックシートを求める背景には、大きく3つの目的があります。
目的 |
主な公的根拠 |
ポイント |
リスクの可視化と責任分担 |
IPA『委託先管理チェックリスト』 |
委託先リスクを把握し、責任範囲を明確にする |
コンプライアンス確保 |
NIST SP 800-161 Rev.1 |
法令・業界ガイドライン遵守の実証に必須 |
監査・説明責任 |
FISC『外部委託に関する有識者検討会報告書』 |
上場審査・第三者監査で提示できる裏付け資料になる |
よく聞かれる項目と準備例
チェックシートの定番質問をカテゴリーごとに整理しました。自社で証跡をそろえる際の「目安」としてご活用ください。
カテゴリ |
質問例 |
準備する証跡 |
アクセス管理 |
管理者権限の付与/削除手順は? |
権限管理規程、申請ワークフロー |
ログ管理 |
重要ログの保持期間は? 改ざん防止策は? |
保管ポリシー |
バックアップ |
復旧テストの頻度は? |
DR テスト報告書 |
物理セキュリティ |
サーバールーム入退室の記録方法は? |
入退管理システムのログ |
回答の基本スタンス
- 現状を正直に書く
理想像より現実的な運用を示す方が信頼されます。不備があれば改善計画を添えてネガティブ評価を回避しましょう。 - エビデンスを用意する
「実施している」と回答した項目には運用手順書・教育記録・ログ保管場所などをすぐ提示できる状態にしましょう。 - 用語・範囲を確認する
依頼元と定義が食い違うと差し戻しが発生します。不明点は早めに質問し、共通認識を作りましょう。
社内体制を整える3ステップ
チェックシート対応を特定の担当者に依存しない体制とするために、以下の3点を整備することが有効です。
窓口を一本化
情報システム部など回答責任部署を明確に
ドキュメント集約
ひな形回答・証跡ファイルを社内ポータルで共有
定期レビュー
四半期ごとに項目を棚卸しし、最新状態に保つ
曖昧な質問への対処法
「適切な措置を講じていますか?」のような抽象的質問には “具体策+頻度+責任者” の3点セットで答えると説得力が増します。
「全社端末に導入したEDRのログを、情報システム部のセキュリティ担当が毎週月曜日に確認し、異常があれば即時対応とエスカレーションを行っています。」
提出後のフォローアップ
回答後も放置せず、質疑対応のSLA(Service Level Agreement:サービス品質保証契約)を決めるとトラブルを防げます。再質問には2〜3営業日以内に回答するなど、あらかじめ宣言しておくのがポイントです。
差し戻しを防ぐチェックリスト
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外部基準とのギャップ分析
自社がISO/IEC 27001を基礎に運用していても、依頼元のチェックシートが NIST SP 800-171 を前提にしていると項目体系が微妙に異なり“空欄”が増えがちです。提出前に対照表(クロスマッピング)を作成し、言い換える説明を加えると評価がスムーズになります。
よくある質問(FAQ)
Q1:機能要件を満たすが手順書がまだ整備途中の場合は?
A1:現行手順を要約し、正式版リリース予定日を明記。改善ロードマップを添付すれば許容されやすいです。
Q2:アウトソーシングしている部分の詳細を求められたら?
A2:委託契約で取得可能な範囲を説明し、不足分はサブベンダーのSOC2/ISMS証明書で補完します。
Q3:ゼロトラスト導入途中で一部の資産しか対応できていない…
A3:対象範囲を限定して回答し、全社展開のスケジュールを併記しましょう。
セキュリティチェックシートは「減点方式で評価するため」のものではなく、「共にリスクを管理・低減していくための対話ツール」です。
依頼元とオープンにコミュニケーションし、自社の成熟度を継続的に高める姿勢こそが最良の回答となります。
フューチャースピリッツはインフラ構築・運用からシステム開発までワンストップで支援する企業です。お客様の環境を熟知したエンジニアが、貴社に代わってセキュリティチェックシートを記入することも可能です。専門用語や証跡準備にお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。